悪夢にうなされ、そのあまりの内容に短い悲鳴をあげながら目覚めると、途端に頭がかち割れるのではないかという程の頭痛が襲ってきて、起き上がりかけた身体をふたたび横たえた。うつ伏せた頬に当たる、冷たい床石が心地よい。…ということは、私は床で寝ていたということになる。寝転がったままで辺りを見回せば、そこにはゴロゴロと酒瓶が転がって、まるでどこかの酒蔵のようだった。これだけ飲めば、そりゃあ頭痛だってするだろう。夢見だって悪くなるはずだ。
しばらくそのまま痛みの波が去るのを待って、一段落したところで身体を起こした。さすがに、いつまでも床に転がっているわけにはいかない。
ふらふらとおぼつかない足で近くの椅子まで歩き、そこに腰かけて再び辺りを見回す。よく見れば床だけでなく至る所に、よくもまあこれだけ、という量の瓶が散乱していた。自殺でもする気だったのだろうか。
そこまで考えて、はたと自分の置かれた状況に気付く。ああ、本当に、冗談でなく自殺を図ったのかもしれない。たしか昨日は東方から満身創痍で帰ってきて、そうとう精神的に参っていたのか大酒を飲んで、いっそ酒に当てられて倒れ込み、そのまま目覚めることが無ければいいとさえ思ったことを覚えている。
何を考えていたのか知らないが、そんな馬鹿なことにならなくて本当に良かった。敗戦してきた揚げ句、急性アルコール中毒で死んだ将軍など聞いたことがない。もしもそうなっていたら、今頃実家では一族の恥さらしとして、私の存在した証を抹消しはじめていることだろう。自分たちを率いていた将軍がそんな死に方をしたと知ったら、犠牲になった者たちだって浮かばれまい。
とにかく私は後先を考えずに行動しすぎる、いつか誰かに言われた通りだ、と自分で自分をたしなめながら、ふと横に備えられたテーブルの上に目をやった。小さな紙切れが置いてある。
なんだろうと思って手に取ると、そこには見慣れた筆跡で何事かが書きつけてあるようだった。それを見た途端、自分の頭からさあっと血の気が引いていくのを感じる。そのくせ頭痛だけは舞い戻ってきて、少ない血が巡るたびに堪えがたいほどの鈍痛を残していくのだ。
内容自体は、これといって騒ぎたてるほどのものではなかった。今日の午後に軍議があること、そして辛いかもしれないが必ず出席するように、と労りの言葉まで添えてある。しかし私にとっては、書きつけられた文字が示す人物が問題だった。頼むから違っていてくれ、と思いながら署名を見る。そこには見慣れた筆跡で、バッシュ・フォン・ローゼンバーグと、ご丁寧にもフルネームが記されていた。
あれは悪い夢ではなかったのか。そのことを自覚すると共に、大声をあげながら辺りを暴れ回りたいような気分が襲ってくる。欲望のままにそれを実行に移そうとするが、立ち上がった途端に吐き気がするほどの頭痛を覚えて、仕方なく椅子に腰かけた。ああ、今度こそ本当に死んでしまいたい。
バッシュ、お前の言うとおりだ。今となっては取り返しがつかないが、私は後先を考えずに行動しすぎる。そして一度そのことを思い知っても、学習するということを知らないようだ。つまりお前はいつでも正しく、私はいつでも愚か者だと、そういうことなのだろう。

ついでだから教えてくれ。私はこのあと控えている軍議で、どの面下げてお前に会えばいいのだ。


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自分がやったことに責任を持ちましょう。
それが大人というものです。