うるさい奴らがいない所へ引き上げると、バッシュは堰を切ったように話しだした。上層部の奴らは分かっていない、軍内部から起こった反乱というのは根が深くて、軽い気持ちで突いていいような物じゃない。鎮圧すれば終わりになるものでもないし、もっとじっくり腰を据えて考えてから行動すべきだ。云々。
今度は私がお説拝聴しながら思う。つくづく現金な奴。つい先程まで借りてきた猫のように大人しかったのが嘘のようだ。
「これは、お偉方が考えているほど簡単な問題じゃない…もっと複雑に入り組んでいて、解きほぐしにくいはずだ。まず、彼らが何故ああいった主張をするのか、そこを解決しなければ」
バッシュの言い分は分かる。たしかにお偉方が言うように、ただ武力で制圧しても根本的な解決にはならないだろう。だが同時に、これは悠長に構えていられるような問題でもないのだ。
「たしかに難解だ。だがバッシュ、お前が言うように石橋を叩いて渡っていたら、問題が収束するのはいつになる?我々が王都で頭を抱えている間に、膨大な数の死者が出るだろう」
「だからといって、すぐに出兵したところで、今はよくても後になって歪みが顕わになるぞ。そしてそうなったら、被害の大きさは今と比べ物にならない」
いつだってバッシュは先のことばかりを言う。先のことばかり考え、先のことばかり心配して、今現在のことが疎かになりがちだ。思慮深いと言えなくもないが、決断が遅いと評されることのほうが多い。そして、本人もそれを自覚していないわけではないだろうに、一向に治す気配がないのだ。
「お前はいつもそれだ。起こるかもしれないことを按ずるより、直面している問題に対応するほうが生産的だ、と俺は思うが?心配というのは何も産み出さない。いい加減に前を見ろ!」
バッシュの表情が曇り、じっと考え込むような素振りを見せる。おそらく、彼の頭の中はいま、『起こるかもしれない』光景でいっぱいなのだ。そこから抜け出せなくなっている。そういう状態に陥っているバッシュを見るたび、私は苛々して仕方がない。現実を見ろ!
「…ウォースラ、お前が正しいのかもしれない。だが、俺はそのように考えられないのだ。今は動くべきではないと思う」
そう言って、バッシュは済まなそうな表情を見せた。彼自身は心から済まないと思っているのかもしれないが、だからといって動かないことに変わりはない。私にとっては何の慰めにもならないのだ。悪びれもせず押しつけてくるより、余計に質が悪いと思う。
しかし残念なことに、こいつが言い出したら聞かない男だというのは、私が一番よくわかっている。こうなったら何を言っても、やっても無駄だ。泣いて頼めば動いてくれるのかもしれないが、さすがにそこまでする気にはなれない。
「…ならば俺が出る。そしてお前もお偉方も納得させてやるさ!それで文句はないだろう!」

結局、割を喰うのは私なのだ。何かが間違っている。


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被害妄想が激しすぎる。

あと一人称は、会話→俺 地の文→私 で行ってみました。