厄介ごとというのは時間や場所を選ばない。忘れた頃にやって来て、慣れた頃には友人を連れてくる。そんな奴だ。それは今回も例外ではなかった。



「アズラス将軍、ナルビナ要塞駐留部隊から連絡がありました!…東ダルマスカ地域に反乱あり。町に武装集団が攻め込み、住民を支配下に置いて、アーシェ殿下とラスラ殿下の婚約を白紙に戻すよう要求しています!」
私はそれを聞いた当初、なにかの悪い冗談だろうと思った。意図が見えなかったからだ。隣国との同盟を兼ねた婚約を破棄しても、損害がありこそすれ得はない。近隣の小国は皆、帝国の侵略に備えて周辺との関係を強化している最中だというのに、ダルマスカだけが逆行して何になるというのだ?
「……首謀者は」
「不明ですが、装備の種類から想定されるのは警備兵です」
「……規模は」
「一般的な中隊程度とみられます」
「……思想犯だろうな」
「おそらく」
「……厄介だ」
軍の内部事情に明るいであろう思想犯。最悪だ。自分の気分が急速に沈んでいくのを感じる。そしてこの先起こるであろう事を思い描いて、またげんなりした。さあ、これからバッシュと合流して、お偉方との楽しいデートに出発だ。


「…という報告を受け調査したところ、事実確認が取れました。相手は振興の極右集団のようです。また、その中心部には軍関係者の影がちらついています。なんでも、アーシェ殿下の婿取りによって、ダルマスカ王家がナブラディアに乗っ取られると主張しているらしく…」
偵察兵の報告に耳を傾けていた老人が、盛大に顔をしかめて溜め息をついた。何でいるのかわからない、軍付属のお偉方の一人だ。
「非常識にも程がある。そんな輩の言うことなど聞くことはない、すぐに軍を送って鎮圧すればよい」
お偉方というのは、一事が万事こんな感じだ。言うだけ言って何もしない。私はこんなふうにだけはなるまいと、常日頃から努力している。反面教師という意味では最高の相手だ。
「そうは言われましても、相手は軍関係者です…内通者がいないとも限りませんし、もう少し慎重にことを進めたほうがよろしいのでは」
隣でおとなしくお説拝聴していたバッシュが、普段からは考えられないほどの小声で呟いた。バッシュは高官と作戦会議に出るのが好きではないのだ。いかにも貴族然とした、時に婉曲し時に高圧的な物言いに耐えられないらしい。
「相手が情報を得るより前に攻めてしまえば問題なかろう。それに軍といっても中隊程度の規模らしいではないか。こちらが圧倒的な火力を用いれば落ちる」
「…しかし、それでは民に被害が及びますが」
「それを最小に押さえるのが貴殿らの仕事だろう」
苛々と机を叩きながら、高官が吐き捨てた。素直に言うことを聞かない我々に腹を立てているのだ。だが苛々しているのはこちらも同じ。ならばお偉方の仕事は嫌味を言うことなのでしょうなと言ってやりたいが、そこは我慢して言わねばならないことだけを言った。
「数の問題ではないでしょう。軍内部の反乱で民間が被害を受けたとなれば、軍そのものの信用にも関ります」
「…もういい、とにかく貴殿らのどちらかが鎮圧に向かえ」
何がもういいのだろう。何も解決していない、何も進んでいない。堂堂巡りを回避しただけだ。
「…わかりました」
どうせ実行するのは私たちだ。従うふりさえしておけば、後はどうにでもなる。ちらりとバッシュに目くばせをすると、彼も意図を理解したらしく、こくりと小さくうなずいた。そのまま礼をして、早足にその場を立ち去る。


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続きます。

なんかマイ設定ばっかりでヒィィ!って感じですが…

もっと引かれるの覚悟して告白すると、うちのウォースラは貴族出身設定です(あれでも)

ヒィィ!!