重く仰々しい鎧を脱ぎ捨てて、ただ眠るためだけにあるような己の部屋へ引きあげる。部屋に入るとすぐベッドに腰かけ、そのまま上体を倒した。明かりを付けなかったために何も見えないが、馴れているので何処に何があるかは分かる。緩々とサイドボードに手を伸ばし、水差しを掴んでそのまま口を付けた。少し零れたが、そんなことは気にしない。
口元から頬をつたい、生温い水がシーツに吸い込まれていく。顔に張りついた水分は自分の体温によって温められ、より不快な温度になったが、布に染み込んだものは適度に冷たく、気持ちがよかった。その部分に頬を当てて溜め息をつく。


そうしながら、ふと双子の兄のことを思い出した。死んでいるはずの兄。けれど本当はナルビナに投獄されている兄。この前見たときは、かつての面影が消えるほどやつれて、髪も髭も伸び放題だった。風呂に入っていないのか、垢染みて汚らしかったような気もする。よく覚えていないが。兄と自分は昔からよく似ていたので、最初は意識的に、徐々に習慣として、あまり容貌を見ないようになったのだ。同じ顔と向き合うのは鏡の前だけでいい。
はっきりと覚えていることといえば、兄が入れられていた檻の形状くらいだ。お笑いなことに、兄は小鳥用の鳥篭を巨大にしたような檻の中に繋がれていた。囚われのお姫様じゃあるまいし。


兄はきっと、今でもあの檻に繋がれているのだろう。そして食べ物も充分に与えられず、飲み水にさえ不自由して、自分の置かれた状況に絶望しているはずだ。同じ時、弟は暖かなベッドに横たわり、ぬるくなった不味い水を喉に流し込んでいるとも知らず。
そう思うと、何故だか先程の水がものすごく美味かったような気がしてくる。兄が得ようとしても得られないもの。自分は易々と手に入れられるもの。
自分がこうしている間にも、兄は檻に繋がれ、絶え間ない苦痛に顔を歪めているだろう。そんな兄が哀れとは思わない。兄はあのまま朽ち果てれば良いのだ。そのときが来たら、亡骸くらい引受けてやってもいい。


 ブラコン弟。ああそう、よかったね。という話。

 FF12に、これでもか!と兄弟が登場するのは、

 兄弟モノで萌えろという暗黙の提示だと思うので素直に転びました。


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